つくば市議会議員 金子かずお
週刊・新社会つくば 金子さん町を歩く 議会報告

週刊・新社会つくば
2010年7月20日 第709号 発行:新社会党つくば支部

逆水門(常陸川水門)の柔軟運用を提起する


最近、霞ケ浦の水質悪化の重大な原因の一つとなっている常陸川水門(通称:逆水門)に魚道を設置するプランが公表されましたが、総費用20億円もかけて、その効果には早くも疑問の声が上がっています。

これに対して、霞ケ浦・北浦の自然回復に取り組んでいるNPO法人のアサザ基金では、無駄な費用をかけず、逆水門を柔軟運用することによって、水質 の改善と漁業の復興を図り、さらには余剰水を農業用水に転用することで水の有効活用を図る、正に一石何鳥というプランをHPで提案していますので、紹介を します。


● 当初は常時閉鎖ではなかった

逆水門は利根川河口より18.5㌔付近に位置する水門で、1959年2月に工事着手、63年5月 竣工されました。事業費は約18億円です。

そもそもは、戦後、霞ヶ浦流域の洪水防止(1941年7月の台風8号洪水に逆流して被害が出た)を目的に、常陸利根川の排水能力を高めるために拡幅工事が実施されたのが発端です。

水の排出は良くなって洪水は抑止されましたが、反面、主として渇水時に海水が逆流しやすくなり、そのために流域の農作物等への塩害が増加し、塩害防止の施策が必要となり、逆水門が設置されたのです。

当初は年間100日に限った閉鎖であり、残りの期間は水門を開けていたので、魚の遡上が可能でした。


● 逆水門完全閉鎖の影響

1973年、完全閉鎖が実施され、湖を完全に淡水化、ダム化して工業用水、生活用水を確保するのが目的で閉鎖されました。

淡水化によって産業、生活用水の確保はされましたが、多くの弊害が生まれました。

魚が遡上できなくなったため、従来の漁業は大きな打撃を受け、汽水域で生きてきた多くの魚種が姿を消したため、水質にも悪影響を与えています。

水の動きが少なくなり、ヘドロが多量に堆積し、水質悪化対策として、しゅんせつが行われ、そのために多額の費用が発生し、これらは無論、税金の投入です。

産業用水の確保という面でも、汲み上げている農業用水は水門のすぐ近くなので塩分が入り易くなっている問題が出ています

一方で工業用水は余っていて、余剰水廃棄の費用が企業の大きな負担となっています。

漁業者を中心に、逆水門の運用見直し要望の声は再三上がっています。

しかし逆流海水が農業用水に取り込まれるのをおそれ、逆水門は閉められたままです。


● 解決のための提案

塩害の心配の無い、簡単な方法で、これまでの話しは解決できます。

農家は塩害の不安を解消、企業はコストを軽減、地域は活性化するという、誰にとっても望ましい方向です。しかも既存の施設の運用を変えるだけ、かかる費用は最低限です。

逆水門付近の、塩分を含む水の取水をやめて 数メートルしか離れていない、地下の農業用と工業用のパイプをつなぎ、余剰の工業用水を農業用に転用すれば良いのです。


● 逆水門は柔軟に開閉できます

湖の淡水化を保ちながら魚の遡上を助ける条件は設定可能です。

魚道の設置よりも低コストで簡便で、もちろん法律的な問題はありません。

漁獲量が増加し、漁業の振興が期待でき、とる漁業の復活で、水質も浄化でき、漁獲量が増えれば魚に含まれるリンや窒素を、それだけ多く湖から取り除くことができます。

ヘドロのしゅんせつよりも低コストで水質浄化ができます。


● 土浦市議会は柔軟運用を議会採択

土浦市議会は逆水門の柔軟運用を議会採択しました。




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