倉敷市の行財政改革の視察報告
世界金融市場の混乱が長期化する中、人口減少化と少子化の社会影響により,支える層と支えられる層のバランスが崩れ、財政状況は国や地方ともに厳しい状
況が続きます。加えて,構造改革や地方分権の進展に伴い,市民の需要に的確に対応できる行政機構や財政改善などについて積極的に推進していくことが求めら
れています。
つくばエクスプレスの開業以来発展の続くつくば市においても,厳しい経済状況の中で,維持管理経費や経常的経費など,財政の硬直化が懸念されており,行財政運営の健全性に努めることが急務であります。
新庁舎も開庁し、分庁舎方式から一か所で市の行政サービスが提供出来るようになりましたが、これまで以上に市民が利用しやすい行政サービスの場としての提供と機能の充実を図ることが必要であります。
このような事から、倉敷市役所並びに明石市役所で行われている行財政改革について、つくば市政に反映できるよう行政視察を実施したので、報告をいたします。 (明石市の報告は順次に)
倉敷市役所の行財政改革の取り組みを視察する
倉敷市では従来から行財政改革について、事務事業の見直しや経費の削減等に取り組んできたが、平成7 年度に「倉敷市行政改革大綱」を策定して以来、計画策定とその着実な実行を絶え間なく続けてきている。
策定時期 計画名称 計画対象期間
平成 8 年2 月 倉敷市行政改革大綱(平成 7 年度~平成11 年度)
平成11 年6 月 倉敷市新行政改革大綱(平成12 年度~平成14 年度)
平成15 年3 月 「くらしき行革21」倉敷市行政改革大綱(平成15 年度~平成17 年度)
平成17 年9 月 平成17 年度倉敷市行財政改革実施計画(平成17 年度)
平成18 年2 月 倉敷市第五次総合計画後期基本計画行財政改革編(平成18 年度~平成22 年度)
この間の計画では、時代背景を象徴する「少子高齢化」「高度情報化」「国際化」「地方分権」「市民協働」「景気低迷による税収不足」等に対応した行財政改革計画となっている。
その後の地方行政を取り巻く社会経済状況に鑑み「人口減少社会の到来」「地方分権の進展」「経済状況・財政構造の変化」「インフラ・施設の大規模修繕時
期の到来」など、大きな変化への対応が求められる環境に対応するため、まず、第一に「少子高齢社会」が更に進んだ「人口減少社会」の到来について。従来の
「少子高齢社会」では、医療、介護等社会保障関係経費の急激な増大等が課題と言われていたが、「人口減少社会」においては、それらに加えて、需要、供給の
両面から経済活動が低下すること、施設や設備が過剰になること、様々な分野で担い手が高齢化し後継者が不足すること、空き家、空き店舗の増加により居住環
境が悪化することなどへの対応が大きな課題と言われ、加えて税収の減少は、従来は生産年齢人口の低下による所得課税部分の減少が言われてきたが、人口全体
が減少することで、消費課税、資産課税も含めて長期的に減少傾向になると言われています。
次に「地方分権」の進展に伴い、現在、「地域主権」とも言われているが、住民ニーズがそれぞれの地域によって多様化、複雑化していく中で、それぞれの地
方自治体が責任をもって自らの進むべき道を決定していくことが必要と考え、今まで以上に、地方自治体の自主性、自立性が求められる。
この地方分権・地域主権に対応するためには、市職員一人ひとりの意識改革、能力向上が必要であり、市民協働を推進し、市民と一緒になったまちづくりを行っていく必要がある。
3点目は、経済状況、財政構造の変化への対応です。小泉内閣のいわゆる「三位一体の改革」による国庫補助負担金、交付税、税源移譲を含む税源配分のあり
方の見直しは、地方財政に大きな影響を与え、民主党政権による国庫補助金や医療制度改革をはじめとする各種制度の見直し進み、地方行政、地方財政に大きな
影響を与えています。加えて、平成20 年9 月のいわゆる「リーマンショック」後は「100
年に一度の未曾有の経済危機」と言われ、国、地方自治体の税収は一気に落ち込み、苦しい財政状況に拍車がかかり、今後の経済動向を予測することは困難です
が、大幅な税収アップは期待できないと思われる。
このような、経済状況の悪化による税収の急激な減少、国の制度変更による財政構造の変化に対応して持続可能な財政運営を行うために、一層の経費削減、歳
入確保の取組が必要であることから、倉敷市役所では、「倉敷市行財政改革プラン2011・・未来の倉敷のために今取組む改革」を策定し、地方自治体の大き
な課題としてクローズアップされている、インフラや施設の大規模修繕時期が一斉に到来することに対応できるようにした。
主な方針は以下の通りです。
「業務改革」…
最適な行政サービスを効率的に提供するため、仕事の仕組み、やり方そのものを見直します。
市民のニーズやライフスタイルが多様化している現在、今までの行政サービスのレベル、内容で充足しているのか、逆に過剰なサービスになっていないか、常
に見直しが必要です。また、サービスの実施主体として行政が本当に最適なのか、地方自治体は、公共セクションとして何をなすべきか、どこまですべきか、ま
た、民間やNPOの専門性を活用し、市民とできることは市民と一緒に、という視点で見直します。
「効率的」に提供するということは、単純に低コストを目指すということではありません。もちろん、市民の税金を財源としている以上、無駄な経費をかける
ことがあってはなりませんが、「最適」なサービス提供のために経費の追加が必要な場合もあります。「最適なサービス」と「効率的に提供」は、不可分なも
の、車の両輪として、検討していきます。
「財政構造改革」…
安定した財政構造の確立に向けて取り組みます。
別項「1
倉敷市の行財政改革の経緯と現状認識」に記述しているとおり、社会保障費の増大、公共施設の大規模修繕時期の一斉到来等により歳出構造が今後更に逼迫する
ことに加え、人口減少による税収の減少や、政権交代による補助金、交付金の制度改革等により、歳入構造も大きく変化していくことが予想されます。
こうした環境の変化にも的確に対応できる安定した財政構造の確立に向けて、歳入、歳出の両面から改革を実施します。
「職員・市役所改革」…
市民サービス向上のため、職員の意識改革を進める制度、体制に変革します。
この行財政改革プランの目的は、将来の社会経済状況の変化にも対応できるように本市の様々な制度や事務事業を見直すことですが、同じことは市職員にも当てはまります。
将来の社会経済状況の変化にも適応できるように市職員も自ら変革していく必要があります。また、職員の意識改革を個人レベルの問題として捉えるだけでな
く、職員の意識改革を支える、推進するための市役所の制度、仕組みへの改革が必須です。そのための取り組みを着実に実行していきます。
以上のような大綱を定め、行財政改革を実施しています。改革を進めることで市民に還元されるようにしていきたいと思います。