二年目の東日本大震災
大震災から早くも二年の歳月が流れ、三度目の春が訪れる。
被災地に復興のつち音が響きわたるのはいつの日になるのだろう。
大きな被害を受けた岩手、宮城、福島3県の沿岸37市町村では災害危険区域が復興に影響が出てきているという。
県内でも復興は進むも風評被害の影響は農林・水産・観光などの分野に依然暗い影を落としている。
甲状腺検診 加速させよ
鎌田實さんが執筆
毎日新聞の東京2/23刊で、医師・作家の鎌田實さんが、「さあこれからだ:/49」として「甲状腺検診、加速させよ」を執筆しました。
参考までに紹介します。
(小見出しは杉森弘之牛久市議)
福島の小児甲状腺がん
福島県の県民健康管理調査の検討委員会が、新たに2人の子どもに小児甲状腺がんが見つかった、と発表した。
東電福島第1原発事故後、がんが見つかったのはこれで3人となった。
さらに7人の子どもに甲状腺がんの疑いがあり、追加検査中だという。
原発との因果関係は?
検討委の鈴木眞一・福島県立医大教授は「もともとあったものを発見した可能性が高い。原発事故との因果関係は考えにくい」と語ったが、それを聞いて納得するお母さんは、多くないのではないか。
このニュースを緊急にぼくのブログに載せたところ、南相馬市の若いお母さんからメールが届いた。「怖くなった。とても不安です」と書いてあった。当然だ。
がんの発生リスク上昇
通常、小児甲状腺がんの発生率は100万人に1人といわれている。36万人の子どもがいる福島県で3人見つかったということは、福島県での発生リスクが、通常の10倍近くに上がっていることを意味している。
チェルノブイリ原発事故では、高汚染地域で6,800人の子どもたちに甲状腺がんが発生した。発生数は、原発事故の4年後に急激に増加している。だからといって、事故から2年の福島で甲状腺がんが発生しないということにはならない。
放射能ノイローゼ?
ぼくがチェルノブイリの放射能汚染地域を初めて訪ねたのは、1991年1月。
原発事故から4年半後だった。当時、国際原子力機関(IAEA)も世界保健機関(WHO)も「原発事故で健康被害はない。多くは放射能ノイローゼだ」と発言していた。
だが、実際にベラルーシ共和国の小さな村を訪ねると、複数の小児甲状腺がんの子どもがいることに気がついた。
当時は、甲状腺に注目した検診はほとんど行われていなかった。
事故後どの時点で小児甲状腺がんが発生したかは、検診が十分でなかったため、分からなかった。
早期の検診が必要
すぐに手を打った。ぼくが代表をしている日本チェルノブイリ連帯基金(JCF)は、日本から甲状腺の専門医を連れていき、放射能汚染地域で甲状腺検診を始めた。
現地の病院に超音波検査機器を送った。原発事故と小児甲状腺がんの因果関係が公的にみとめられたのは、この数年後である。
福島の県民健康調査検討委は、2年半かけて子どもの甲状腺検診を行う計画だが、これはまずい。「4年たたないと小児甲状腺がんが出ない」という考えに寄り過ぎているのではないか。
検診はできるだけスピーディーに進める必要がある。
福島県検討委の不可解
だが、県は検討委の委員を事前に集めて秘密裏に「準備会」を開き、1例目の小児甲状腺がんが発生した時「原発事故と因果関係はない」と、見解をすり合わせていた。
毎日新聞の報道によると、秘密会では「甲状腺の専門家が少ない。県外で検査する医療機関の認定を遅らせ、県内体制を作っていきたい」との考えも示されたという。
県外に避難した人たちの甲状腺検査は後回しでいい、と言っているに等しい。
検診を希望される方へ
福島から子ども連れで避難したたくさんのお母さんから、不安の声が寄せられている。
JCFでは、信州大学や諏訪中央病院で子どもたちが甲状腺検診が受けられるよう、サポートを始めた。
費用もJCFが負担する。
諏訪中央病院での甲状腺検診は3カ月先までいっぱいだが、それでも検診を希望される方は、ぜひJCF(電話0263・46・4218)へ相談してほしい。
また、ぼくが名誉理事長を務めている震災復興支援放射能対策研究所(福島県平田村)では、3月から甲状腺検診を始める。
エコー検査と血液検査のセット。1万6,000円かかるが、子どもは無料だ。
今のペースでは遅すぎる
だが、今のペースでは、36万人の検査を2年半で終わらせることはできない。
日本全体で協力体制をとることが不可欠なのだ。
昨年11月、国連の人権理事会に選ばれた専門家が日本で調査を行い、福島県民の外部被ばく量を推定する調査の回答率がわずか23%だと批判している。
これまで福島県も国も「大丈夫」と言うばかりで、放射能の「見える化」をスピーディーにしてこなかった。
放射性ヨウ素の半減期は8日。測定をもっと早い時期にすべきだった。
弘前大学の被ばく医療総合研究所が、原発事故から1カ月後の11年4月11日から6日間、原発から30㎞圏にある浪江町津島地区にとどまった17人と、
福島市に避難した48人の合計65人の甲状腺を検査したところ、大人で最大87ミリシーベルト(mSv)、子どもで最大47mSvの被ばくをしていたこと
が分かった。
事故から8日以内の3月15日ごろに、もっと多くの人の外部被ばく量を測定していたら、100 mSvを超える人がいた可能性もある。
県民の1%にあたる約2万人にガラスバッジ(線量計)を持たせていれば、外部被ばく量を測ることができたはずだ。
外部被ばくの実態を早期に把握できれば、もっと早く対応できたかもしれない。
地域社会も関与を
例の国連の専門家は、「専門家だけでなく、地域社会もかかわらなければいけない」と指摘している。
検討委に最初から、被害の当事者である福島県民の代表が入っていれば、秘密会議など行われなかったに違いない。
不透明な検討委のあり方を改め、今からでも子どもたちを守るため、国を挙げて甲状腺検診をスピードアップさせるためのサポート体制を組むべきだ。