つくば市議会議員 金子かずお
週刊・新社会つくば 金子さん町を歩く 議会報告

週刊・新社会つくば
2014年11月11日 第913号 発行:新社会党つくば支部

福祉施策として
障害福祉、生活保護&一般福祉、介護&高齢者
の三本柱を中心に障がい者の福祉に取組む方針が定まった②


所得が一定以上だと自己負担は2割に

 介護保険の財源は、1/2が国と自治体、残り1/2を40歳以上の被保険者(1号被保険者)が支払う保険料で賄われています。超老々介護時代に突入する と、今の介護保険制度自体の持続性も危ぶまれます。そのため、現在は介護保険サービスを利用するには、年収などにかかわらず1割を利用者が負担しています が、改正後は一部の利用者の負担が増えることになりました。

 来年(2015年)8月から、年金収入280万円以上の人は自己負担が2割になります。「年金収入280万円以上」となるのは、モデル年金や平均的消費 支出の水準を上回り、被保険者の上位20%に該当する層にあたります。厚生労働省は、在宅サービス利用者の約15%、特別養護老人ホームの入居者で約5% が2割負担になるとみています。

高額介護サービス費の上限も引き上げに!

 介護サービスは要介護度ごとに、1カ月の1割負担で利用できる上限額が決まっています。例えば、要介護5なら約36万円です。自己負担割合は1割のた め、月に約3万6,000円です。年金収入が少なかったり、夫婦で介護サービスを利用していたりすると、家計の負担が重くなることも。こうしたときに役に 立つのが「高額介護サービス費」です。

 医療保険における「高額療養費制度」同様、所得に応じて1カ月の自己負担限度額が決まっていて、それを超えると払い戻される仕組みになっています。改正案では、この自己負担限度額が引き上げられる予定です。

 一般の課税世帯の限度額は月3万7,200円ですが、来年(2015年)8月から新たに所得区分が1つ増え、一定の所得以上の高齢者の上限額は引き上げられる予定です。

低所得者は保険料の軽減拡大

 65歳以上の高齢者が支払う介護保険料は市町村によって基準額が異なりますが、全国平均で月額4,972円です。所得が低い人は段階的に保険料が軽減さ れる仕組みになっています。この軽減率が来年(2015年)4月から拡大されます。軽減の対象になる人は、世帯全員の市町村民税が非課税か、本人が非課税 であることが前提です。

 対象となれば、次のように保険料負担が軽くなります。

介護保険料が軽減する人と軽減率

2015年3月末までの保険料 2015年4月以降の保険料
生活保護被保険者、世帯全員が市町村民税非課税の老齢福祉年金受給者等 基準額x50% 基準額x30%
世帯全員が市町村民税非課税かつ本人年金収入等80万円以下等
世帯全員が市町村民税非課税かつ本人年金収入等80万円超120万円以下 基準額x75% 基準額x50%
世帯全員が市町村民税非課税かつ本人年金収入120万円超等 基準額x75% 基準額x70%

※保険料基準額は市区町村により異なる。
資料:厚生労働省老健局「1.介護保険制度の改正案について」/平成26年2月をもとに。実際には、自治体が独自に軽減や上乗せの割合を決めているので、住んでいる自治体の内容を確認する必要があります。


「要支援」サポートが市町村へ

 現在は「要支援1、要支援2」の下に「要介護1~5」があり、これらの要介護認定を受けた人が、所定の介護サービスを受けることができます。要支援は身 体介護の必要はほとんどなく、買い物や調理、洗濯、掃除といった生活面の一部に支援が必要な状態が多いです。この「要支援」を対象とする予防給付のうち、 訪問介護と通所介護について、来年(2015年)4月より3年かけて「医療介護総合確保推進法」を基に、「市区町村が取り組む地域支援事業」に移されるこ とになりました。

 訪問介護は、ヘルパーが自宅で入浴のサポートをするなどのほか、掃除や料理などを手助けするものです。一方、通所介護は、施設に通って、レクリエーショ ンを楽しんだり、機能回復のための訓練を行ったりなどのほか、入浴の介助もしてくれます。これまでは、全国一律のサービスだったものが、市区町村に移行す ることで、市区町村の財政状態やトップの意識次第で、サービス内容や利用料に差が出る可能性はあります。しかし、NPOやボランティアにも頼めるため、多 様なサービスの提供が可能になるとみられています。


特別養護老人ホーム入所は要介護3以上に

 介護保険の施設である「特別養護老人ホーム」は、有料老人ホームなどに比べて利用料も安く、要介護度が重くてもケアしてもらえます。この施設の入所待ち が全国で約52万人にのぼり、すでに深刻な施設不足に陥っています。そのため、来年(2015年)4月より入所条件が設けられ、より厳格になります。原 則、新規入所は要介護3以上の人に限定されるようになる予定です。

 なお、この「要介護3以上」の制限は新たに特別養護老人ホームに入所する人の基準で、現在すでに特別養護老人ホームに入居中の人は、要介護1、2であっ ても、そのまま住み続けられます。また、要介護度が1、2と低くても、所定の「やむをえない事情」に該当する場合は、新規入所できることになっています。

 「やむを得ない事情」の例としては、①認知症高齢者であり、常時の見守りや介護が必要 ②知的障害や精神障害なども伴って、地域で安定した生活を続けることが困難 ③家族等による虐待が深刻であり、心身の安全・安心の確保が不可欠などが挙げられています。


施設の食費や部屋代の補助認定も厳格化

 特別養護老人ホームや介護老人保健施設に入所した場合、食費や部屋代は原則自己負担です。しかし、所得が低い人にはこれらの費用を軽減する仕組みがあり ますが、その仕組みを利用できる認定基準が厳しくなりそうです。これまでは所得(市区町村民税非課税)だけで判定していましたが、これからは預貯金も チェックされることになりそうです。たとえ所得が低くても、単身で1,000万円、夫婦で2,000万円を超える預貯金を持つ場合は、補助の対象から外さ れる見込みです。

 また、世帯分離をしていても、配偶者に住民税が課税されている場合は対象外になるとみられます。今までは、遺族年金や障害年金については非課税収入でしたので収入にカウントされていませんでしたが、改正後はこれらも収入とみなして判定することになりそうです。

 以上が「医療介護総合確保推進法」に関連する介護保険法改正の主なポイントとなりますが、団塊世代の介護問題は待ったなしです。地域包括ケアシステムが有機的に機能することで、今後訪れる超老々介護時代を乗り切っていけることを祈るばかりです。




(c) Kaneko Kazuo 2009