つくば市議会議員 金子かずお
週刊・新社会つくば 金子さん町を歩く 議会報告

週刊・新社会つくば
2016年5月31日 第987号 発行:新社会党つくば支部

国と東電の無能さ痛感


福島第一原発事故
視察・調査

 東海第2原発の再稼働に反対する 茨城県自治体議員連盟が主催

 東海第2原発の再稼働に反対する茨城県自治体議員連盟は4月26~27日、事故から5年目を迎える福島第一原発の実状とその与えた影響について、各方面で視察・調査を行い、金子かずお議員も含め26人が参加した。

 1日目はいわき市で関係各方面の方から、
①いわき市の対応、
②請戸漁港の被害と復興の課題、
③フクシマ原発労働者の現状と課題、
④フクシマ原発収束、廃炉作業の現状と課題、の4点を聞いた。

いわき市の対応
①いわき市の対応については、いわき市復興支援課と原子力対策課より説明を受けた。

● 原子力緊急事態宣言
 2011年3月11日、19時3分に原子力緊急事態宣言が出され、3月15日4時には市内で23.72μ㏜/hの放射線量を観測した。
国からの退避指示はなく、放射能汚染の想定は半径10㌔だったが実際は30㌔以上だった。


(放射能チェックを受ける市民)

● 13市町村で廃炉安全監視協
 事故後の2012年7月に東電と連絡協定を結び、関係13市町村で廃炉安全監視協議会を設立し、立入調査、状況確認、適切な措置の要求が可能になった。
いわき市も専門職を2名採用した。

● 36万市民の避難先は茨城
 いわき市は緊急時防護措置を準備する区域UPZに指定され、本市36万人の広域避難計画では茨城に避難することになっている。

● 東電への申し入れ
 東電へは、①福島第一原発・福島第二原発の廃炉と安全対策、②適正な賠償(40億円の請求に対し現在の支払いは10億円)、を申し入れている。

● 国への要求
 国へは、①中長期ロードマップの着実な取組、②第二の廃炉、③国の責任による監視体制、④汚染水対策・海洋排出のモニタリングの徹底、⑤廃炉作業員の安全確保・労働環境の整備、⑥広域避難における国の関与、⑦廃炉の現状の情報発信、を要望している。 

● 産業被害も甚大
 水産業はまだ試験操業の段階で、農業はコメが流通しているが風評被害が大きく値もたたかれる。損害部分を賠償請求している。

● 仮設・借上補償を終了
 いわき市は1,200人が県外に避難。仮設・借り上げ補償が今年度終了するが、市民は困るとの意見が強い。柔軟な対応を県に要請しているが、県は中止する考えで、2年間は半分なり低額化するとしている。


漁業の見通し無し
②請戸漁港の被害と復興の課題は、相馬・双葉漁業組合から。

 浪江町は逃げるのが遅れ、東電の家族だけバス2台に乗って柏崎へ先に逃げた

 現在、帰還困難区域、居住制限区域、避難指示解除準備区域の3区域に分断され、アンケートでは浪江に戻りたいは17.8で高齢者だけ、3千人が住民票を変えた。
32年度の漁業再開を希望し、港湾整備しても見通しはない。
震災後に新造船は26隻になるが、年間数千億の維持費、かなり厳しい。


悲惨な原発労働者
③フクシマ原発労働者の現状と課題は、フクシマ原発労働者相談センターから。

 原発労働者の宿舎は大熊町、楢葉町、いわき市にも1万人の労働者、いわき市の借り上げ宿舎は2人に1部屋。
作業は放射能レベルによって時間がまちまち、社会保険・労働保険に入っておらず、賃金不払いも多く、不安定のため精神疾患も多い。
下請けは6次まであり、東電は民民の契約で、雇用契約書は把握しているが、賃金は把握していないなどと居直っている。

 毎月100時間以上の時間外労働、狭心症で労災認定、放射線管理手帳が返還されない、危険手当が出ない、などの相談が続いている。
労基署は形ばかりの指導で、あとは民事でおやりくださいという態度だ。


これで原発事故収束?
④フクシマ原発収束、廃炉作業の現状と課題は、原子力情報資料室から。

 廃炉へのロードマップは遅れ気味、使用済み燃料の取り出しは2年遅れ。
汚染水対策は凍土遮水壁の建設費345億円、年間維持費10億円、地下水の建屋流入量200㌧を50㌧にという構想だが、試験運転はうまくいかない、既存技術だと東電の負担になるため、この新方式で国の負担になった。

 鹿島建設と東電がJVで落札したが、長期凍結の実績はない。
廃棄物 持っていく場所がない、ガレキ量18万㎥、伐採木8.5万㎥ある。2011~2016年で東電社員4,706人、協力企業42,052人、東電社員は内部被ばくが多い、250m㏜超えも許容、極限で生涯線量1,000m㏜=1㏜に基準緩和、山間部で12μ㏜/h、ごまかしの放射線管理だ。

 事故処理費用は損賠を含め12兆円、廃炉費用は年5千億円かかる。年間1m㏜以下が緊急事態宣言解除の条件で、解除しないで20m㏜以下での帰還解除を強行している。




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