つくば市議会議員 金子かずお
週刊・新社会つくば 金子さん町を歩く 議会報告

週刊・新社会つくば
2016年6月7日 第988号 発行:新社会党つくば支部

事故収束とは程遠い


福島第一原発視察

 東海第2原発の再稼働に反対する茨城県自治体議員連盟は4月26~27日、福島第一原発の実状とその与えた影響について、1日目は各方面からの報告を聞き取り(前号掲載)、2日目は、①国立研究開発法人日本原子力開発機構遠隔技術開発センター、そして②東京電力ホールディングス福島第一原子力発電所を視察しました。


遠隔技術開発センター?

 福島県楢葉町にある遠隔技術開発センターは、福島第一原発の放射能が高く、人が直接原子炉建屋に入って作業をすることができず、ロボットなどの遠隔操作技術を開発するためのものとのこと。

 初期投資だけで600億円という税金をつぎ込み、高さ40㍍もの試験棟と研究管理棟から構成。


●新たな金儲けの場に

 原発がいかに高くつくものなのかを実感すると共に、事故後に遅々として進まぬ処理作業がゼネコンを含む原発村に群がる大企業の金儲けの場になっていることに怒りを感じた。

 福島県大熊町には放射性物質分析・研究施設の建設が予定され、岩手県や宮城県の自治体は超大型加速器「国際リニアコライダー」(ILC)の誘致に動いているという。

●技術開発か宣伝の場か

 研究管理棟では、廃炉作業訓練用のバーチャルリアリティシステムなどが装備されているが、視察者に体験させており、訓練用というより観光・宣伝用といった感じ。

●原発開発・運営のいい加減さ

 試験棟には、実物大の格納容器の一部なども模造されているが、実際の建屋の詳細な設計図がないために、建屋内の調査に使われたロボットが階段などで引っかかったり落ちたりして回収されていないなど、初歩的な問題を平然と説明され、原発開発と運営のいい加減さを痛感した。


福島原発の深刻な現状

 福島第一原発で驚いたのは、バスで構内を見学する際、ビニールの靴カバーと手袋を渡されただけだったことです。そして、原子炉から少し離れたところで作業している労働者も軽装でいたことです。

●4号機前で針が振り切れ

 参考値として、池田慈取手市議によるバス内でのHORIBAラディの測定値(下図)は、4号建屋前で9.999μ㏜/hを突破し振り切れました(東電の人の測定値は14μ㏜/h)。

 4号機は崩落もありませんから、これだけ高い数値が出るということは、1~3号機の数値の高さを想像させるものです。


(原発視察の出発点Jビレッジ前で記念撮影)

●東電は順調さを装うが

 東電説明員は一所懸命に収束作業の順調さを強調しますが、作業労働者の安全管理、汚染水問題、1~3号機の溶け落ちた燃料(デブリ)回収などは収束とは程遠い状況です。

 雨水の地下浸透と、地下に浸透した放射能の影響を低減するために、1~4号機周辺の土地はすべてフェーシング(モルタル塗装)していますが、池田市議の測定では、最低値のバス乗り場でも1,134μ㏜/hで、3μ㏜/h以上の所が多く、作業労働者の健康問題に重大な懸念が残ります。

 特に6次をも数える下請け化の中で、放射線管理などが空洞化している事実があります。汚染水は結局のところ少し薄めて放出しようとしていると言われています。

 トリチウムは結局取り除くことはできず、「漁協をカネで黙らせる」やり方だとの指摘も。

 デブリに至ってはまったく解決のめどが立っていません。放出し続ける放射能と、燃料プールも心配です。




(c) Kaneko Kazuo 2009