つくば市議会議員 金子かずお
週刊・新社会つくば 金子さん町を歩く 議会報告

週刊・新社会つくば
2016年12月20日 第1,008号 発行:新社会党つくば支部

制限的福祉から普遍的福祉へ


 千葉県野田市の長南博邦市議が、「明石市に見る制限的福祉から普遍的福祉への転換の実践」と題して、行政視察報告文を送付いただきました。
興味深い内容ですので、参考までに掲載します。

明石市の実践

所得制限をしない福祉

 所得制限を前提とする制限的福祉は格差を前提とし、格差を認めるものだから、所得制限をしない普遍的福祉を行っていると、早口で力説する泉房穂市長は1963年生まれの53歳、東大卒の弁護士でかつて民主党の衆議院議員を一期務め、現在市長2期目。
党千葉県自治体議員団6名で行政視察をしたが、泉市長は予定を15分程度オーバーして説明と質疑に応じてくれた。


ばらまきではないか・・・

 格差と貧困が深まる中で、その克服策として普遍的福祉への転換を社会学者が提唱するようになっているが、それを一自治体で実践しているのだ。
当然それは軋轢を生む。高所得者に援助することはない、ばらまきではないか、財政が破たんする・・・。
これまでの福祉制度の常識からくる固定観念を打ち破るのは簡単ではない。やはり、既存の概念を打破するのは、自ら「遅れてきた全共闘世代」だという一種の変わり者のなせる業かもしれない。

こどもに手厚いまち

 しかし、泉市長は、普遍的福祉の一つは所得制限をしないということだが、市長が変わっても続いていく普遍性でもあると自信を持って説明する。
その自信は、「こどもに手厚いまち」を実践し、短期間のうちに人口増、出生数増、そして財政収入増で実績を上げて いることからくる。


1期目に保育料の無料化

 泉市長は1期目に中学3年生までの医療費無料化を所得制限なしで始めた。首都圏では当たり前かもしれないが、関西では珍しいという。
その必要額は年14億円(うち市負担分は11億円。

 今年9月からは第2子以降の保育料(保育所、幼稚園とも)無料化を関西で最初に始めた。もちろん所得制限はなく、第1子の年齢制限もない。
つまり、上の子が成人していてもかまわないというもの。この財源必要額は平年で7億円。

 そして小学校1年生は一クラス30人。これも県内初で今年度から開始した。


短期に人口増・税収増

 これらの「こどもに手厚いまち」、「こどもを核としたまちづくり」で明石市の人口は12年を底にして増加に転じ、4年間で約3,100人増加し、この9月に29万3,858人となっている。
その結果、個人市民税、固定資産税とも増えて、減少し続けていた基金残高は増加に転じている。

 つまり、子育てなど市民サービスの向上が人口増加を招き、そのことによって税収増加、基金残高が増加し始めるという好循環を生み出したということになる。
福祉に予算を使うことによって財政破たんを招くということは嘘だと証明したといえる。


広報で近隣市と比較

 明石市の広報は刺激的だ。今年の10月15日号では医療費や保育料等の近隣市との比較をしている。

 中学校3年生までの医療費では、神戸市と約12万円、加古川市と約18万円、姫路市とは約41万円安いと、制度の違いをグラフで示している。

 保育料では子どもが3人と仮定して、明石市は約301万円ですむが、姫路市は約724万円、加古川市は約764万円、神戸市は約790万だと、これまた比較表を掲載している。これでは近隣自治体は悲鳴を上げよう。


転入者が急増

 明石市への転入者の割合は、市境を接している神戸市からは西区の19%を先頭に、垂水区、須磨区、中央区をあわせて39%、加古川市からは13%、姫路市8%となっている。

 まさにひとり勝ち状態だ。私個人も当時保育料が安かった野田市に転居して、住宅ローンが保育料の減少分で払えたことを思い出す。
もちろん、これは通勤や買い物等の利便性が高いことを見逃してはらない。JRの新快速で神戸市三宮まで15分、大阪まで37分、逆方向では加古川に13分、姫路に24分と近く、その割にまだ地価が安いという環境がある。
だからこそ近隣自治体でアパートなどに住んでいる子育て世帯が、明石市のマンションや一戸建てに転居してくる。
この3年半の明石市の社会増減をみると、20代、30代がともに800人台の増、9歳未満が400人台で、他はすべて減となっている。


光と影も

 もちろん、光が強ければ影もまた濃い。
これらの財源は人件費の縮減と公共工事のスローダウンで生み出している。とりわけ、正規職員は減る一方で、地域手当は神戸市と同じ10%から6%に下げている。仕事の密度も上がっているだろう。

 また、保育所の需要増に追いつかず、今年度は県内最高の479人の待機児童を出してしまった。そのために1,000人分の受け入れ増に今年度、力を注いでおり、そのめどは立ったが、問題は保育士が確保できるかどうかだと担当者は話す。


貧困対策でなく子ども支援

 なお、明石市は子どもの貧困対策ではなく、普遍的な子ども支援を行っている。それは支援される子どもや家庭に恥辱感を与えないこと、支援対象者を見つけるのにつきまとう困難さや事務の煩雑さを解消し、制度の支援漏れを起こすことのないようにしているという。
合点のいく話である。


 明石市長の泉房穂市長は1963年生まれの53歳、「所得制限を前提とする制限的福祉は格差を前提とし、格差を認めるものだから、所得制限をしない普遍的福祉を行っている」と力説した報告内容に感銘します。
つくば市政でも伝えて行きたい。 

金子かずお




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